Save Pulp 療法後、非常に特徴的な石灰化像がX線で確認されることがままある(1)。その特徴として @エナメル質に匹敵する石灰化度を示す。
A窩底の全面に薄く一層広がっている。 B軟化象牙質の歯髄側にできる。 等が挙げられる。この石灰化像形成の原因および臨床的な意義について、症例を提示し考察を加えてみたので報告したい。
目的:
Save Pulp 療法後に特徴的なX線像ができる、ということは施術後のSave Pulp 療法の成否をデンタルで判断することができる、ということに繋がると思う。したがって、その石灰化の機序を考察する価値はあるはずだ。
方法:
石灰化像がセメントラインではないことを確認する。
次に、以下の諸事象
1.エナメル質発生の機序(2)。
2.「Kavo社製DIAGNOdentを用いたう蝕象牙質再石灰化の評価(第2報)」(3)と化石生成の関連性。
3.3Mix-MP以外の薬剤を用いて出来上がった石灰化像。
4.自然界における静的秩序と動的秩序(4)。
5.露髄面を一層壊死させる Save Pulp 療法。
から、Save Pulp 療法後のエナメル質様石灰化には「無生物の場」の存在が大きく寄与しているのでは、という仮説に至った。
考察:
自然界では、無菌化というよりはむしろ無生物化が起ると、石灰化物の結晶化(5)が自発的 に発生するのではないか。
石灰化というものは生物的な反応であるのに対し、結晶化というものは無生物的あるいは物理化学的な反応、と言えるのかも知れない。
従って、Save Pulp 療法成功には歯髄と完全に隔絶され、無菌化された無生物的なう蝕象牙質が必要となる。
<参考文献>
(1) 宅重豊彦:進化する3Mix-MP法;デンタルダイヤモンド月刊宅重豊彦,18,2008
(2) 脇田 稔ほか編:口腔組織・発生学,医歯薬出版,東京,7-9,48,2006.
(3) 畑岡 拓ほか:Kavo社製DIAGNOdentを用いたう蝕象牙質再石灰化の評価(第2報),LSTR療法学会事前抄録,9,2010.
(4) 清水 博:生命を捉えなおす,中公新書503,中央公論新社,1990.
(5) 星野悦郎,宅重豊彦:より大きな効果を引き出す3Mixの臨床応用法,日本歯科評論社(現ヒョーロン・パブリッシャーズ),
No.666,65,1998.
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