第16回LSTR療法学会 学術大会 2017年
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メインテーマ:「治療術式のレベルアップを求めて」

〔口頭発表〕

『LSTR3Mix-MP法により再植・保存した水平性歯根破折の1症例 』 

坂田 純一

目的:

 水平性歯根破折は歯牙外傷に起因するものがほとんどであり、垂直性歯根破折に比べ、頻度が少なく文献も少ない。CDRG友の会Skype症例検討会においても症例として提出される頻度はそれほど多くはみられない。治療法や臨床成績、臨床報告も論文数もあまり多くないのが現状である。それだけに水平性歯根破折症例に遭遇した場合、治療に苦慮することになる。
 今回の症例は平成27年2月26日Skype症例検討会に提出させていただいた症例である。有髄歯の水平性歯根破折においては非感染性の場合であっても歯髄壊死に陥り、壊死した歯髄は抗原となりアレルギー性炎症を起こす可能性が示唆される。将来的に歯根吸収を起こして歯根の温存が困難になること、破折線の機械的刺激による歯槽骨破壊が進行することで歯周組織に多大な影響を及ぼす可能性があった。治療方法はLSTR3Mix-MP法による歯牙再植法による保存を選択した。術後約16カ月が経過し良好であると判断し症例報告として提示する。


症例:16歳女性(初診時)
主訴:前歯の色が変わってきている。(11番)
初診年月日:平成27年1月8日

現病歴:
平成25年春頃 転びかけた時、机の角に前歯をぶつけた。その時は前歯に自発痛があり多少唇側にズレたように自覚し、歯牙が動揺しているように感じた。動揺は続いているものの痛みはすぐに消退したため、 特に診察を受けずにそのまま放置した。

平成26年12月末 突然に自発痛(ズキズキした痛み)が出現した。自発痛は断続的に数日続いた。
平成27年1月6日 前歯(11番)の変色が気になりだしてきた。変色以外の自覚症状はなかった。

現症 
口腔内所見:
11番が茶褐色に変色している。動揺度はMiller分類1度強。PPDは全周で2〜3mm程度。
11番の歯髄診断器による反応値 約60(Max80)
診断名:外傷による水平性歯根破折による歯髄壊死
治療方法
LSTR3Mix-MP法にて歯根部を接着し再植、固定した。
主訴の歯冠部変色に対しては歯牙漂白(オフィスホワイトニングとウオーキングブリーチ法を併用)にて対応した。

考察:

 今回の症例は単純に固定のみの処置あるいは無処置で経過観察した場合は、歯根吸収が進行するか又は歯槽骨破壊が起因となり歯牙喪失に至ると判断した。
 治療法としては、このような水平性歯根破折歯症例に対して現状のままでは破折部の硬組織再生は困難であり、通常のNIETを施術しても構造的に硬組織(根管内)に3Mix-MPの薬剤を完全な密封できず無菌化の達成は不可能及と判断し、歯牙再植法による保存を選択した。
 将来的には同歯牙は脱落・欠損し固定性補綴物に移行する可能性は高いものの、可能な限り歯牙温存を行うことの意義は患者の年齢から考えても有意義なことであると思われる。

 


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