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歯の破折の原因としては種々あるが、直接の作用として「外力」が働く。この外力には事故 時のような口腔外からの作用力、あるいは咬合時などの口腔内での作用力がある。健全歯の
破折は事故の場合が多く、治療経験歯では、事故のほか、う蝕の進行による歯の構造の脆弱 化、割断力を誘起するような充填物の形態（根管ポストや不適切な保持形態）やその装着ミ
ス、あるいは治療時の過剰な切削・削去等を基礎原因として、その上に外力が働いて破折が 起こる。近年では、根充時に加圧を加える従来法根管治療術式の変遷に伴い、根管治療時の
事故としての破折の事例も多い。治療時には感知され無い軽微な断裂や亀裂がその後の咬合 によって破折に至ることもある。
破折線が認められる「ひび割れ」の程度の症例から、割断や断裂と言った破折面が離れて しまっている症例、あるいは歯の脱臼を伴う破折があり、その破折の新旧により治療内容も
異なってくる。また、破折がどの部分で起こっているかによっても処置が異なる。 破折から時間が経ち、歯内に感染した場合、歯髄炎や感染根管としての処置が必要となる
が、3Mix-MPの貼薬で対処出来る。しかし、歯断面間に歯根膜組織が入り込んでしまって いる、特に不良肉芽が存在している（周辺の歯槽骨吸収を伴っている）場合、患歯を一旦抜
去して処置し再植する必要が生ずる。
治療の基本としては、破折の原因となっている不適切な充填、ポストなどを撤去する事、 破折の部を密閉・閉鎖することと共に、歯冠から歯根に向かう縦方向の破折では破折部が離
断しないように歯冠部を締め付けるような帯状、アンレー状、あるいは冠状の保持の補綴が 必要となり、特に再植の場合には隣接する歯に処置する連結が必要となる。
破折部の閉鎖（密閉）が出来るかどうかが、破折歯の治療で最重要点となる。
破折部（破 折線）が口腔に面している場合（例えば、歯根膜と線維結合している歯頸部より咬合側、あ るいは歯周ポケット底部より咬頭側より）、口腔の細菌が侵入できない様な完全な人工的な
密閉・閉鎖が必要となる。多くの場合、外側から閉鎖処置を考える。可能な場合、または、 その方が容易な場合、歯の内部から閉鎖処置を行う。歯根膜に囲まれている部分では無菌状
態を保つことによりセメント質の誘導、あるいは象牙質新生によって閉鎖が起こるので、 LSTR 3Mix-MP療法を行って閉鎖を待てば良いので、治療時の閉鎖は特に重要ではない。
し かしながら、多くの症例では、口腔露出部か歯根膜部かの判断はそう容易ではないし、口腔 露出部の確実な閉鎖の施術もそう容易ではない。
破折に対するLSTR 3Mix-MP療法は、現時点では、破折病態ごとの充分な数の臨床例を経 験しているとは言いがたい。また、破折の処置ごとの治療後の治療効果の判定の見極めの判
断基準、またこれに必要な経過観察期間も必ずしも確立していない。
今学会でのこの特集は、破折歯、あるいは再植の治療経験のあるLSTR歯科医の症例を持 ち寄り、破折病態ごとの治療術式、治療成績に影響する要因等、LSTR
3Mix-MP破折歯治療 の一礎とすべく、会員間の議論を期待したい。
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