〈はじめに〉
LSTR 3Mix-MP療法(以下、3Mix-MP療法)では、う窩の拡大を最小限にし、基本的にフリーエナメルの除去に留めるが、既に充填物がある場合や、歯冠崩壊の大きい症例、あるいは多歯面にわたるう蝕など、充填窩洞の大きくならざるを得ない症例に遭遇する事がある。
3Mix-MP乳歯根管治療では、密封性の高いレジンインレー・レジンセメントによる乳歯根管治療の好成績が報告されている(Takushigeら、Int
Endodont J, 2004)が、窩洞の状況によっては乳歯冠の利用が考えられる。既成の乳歯冠の辺縁の適合性・密閉性は当然低いと考えられるが、厚めのグラスアイオノマーセメントの充填と外側を強度の高い金属で被覆することで、その欠点を補うことが可能だと考えている。
〈方法と結果〉
本報告では、多歯う蝕で、重症な乳歯う蝕患者に対し、既成の乳歯冠を用い、窩洞の密封に留意した症例について、治療経過およびその後3年間の予後観察経過について述べる。
〈考察〉
この方法により、多歯のう蝕であっても、3Mix-MP法と乳歯冠で迅速に対応する事ができ、短期間に咬合を回復させると共に、苦痛を与えることが少ない事もあって容易に患児・保護者との信頼関係を構築する事ができる。
そのため、治療後の定期的な来院が確保され、3Mix-MP療法の予後観察およびフッ素塗布と洗口によるう蝕予防処置によりその後の新たなう蝕の発生を防ぎ、永久歯列のカリエスフリーへとのつなげていくことが可能となった。
地域で子どもの歯を守る上で、極めて有用な方法であると思われる。
|