|
目 的：
|
中心結節の破折により引き起こされる歯髄炎や根尖性歯周炎に対しては、歯髄の感染や壊死の 状況によってapexogenesisやApexification等の治療法が選択される。術式（従来法）としては、
無麻酔下に断髄、壊死組織除去（必要があれば排膿）、Ｃａ（ＯＨ）２仮貼薬、歯根の完成を 待ってＣａ（ＯＨ）２除去、歯冠修復（状況によりＧＰによる根管充填）が一般的である。
しかし、その術式では、Ｃａ（ＯＨ）２の強い薬効により断髄面に変性や壊死を生じさせるため 組織除去の範囲が広くなり、その結果、断髄面あるいは根尖での硬組織形成による封鎖を待っ
ての歯冠修復（根管充填）が必要なため、治療終了までに多くの通院回数と期間を要する。
一方、３Mix-MP法では、象牙質経由あるいは断髄面に形成された壊死組織の上に生体にやさ しく作用する３Mix-MPを貼薬することにより組織の無菌化を図ることができるため、組織の実
質欠損を最小限に壊死組織下に硬組織を形成あるいは根尖を生物学的に閉鎖できる。
軽度～中等度の歯髄炎であれば、原則１回治療も可能である。
当医院で行った中心結節破折による歯髄炎３症例を供覧する。 |
|
症例１：
|
11歳女児、＃25、
中心結節の破折３日目に急性化膿性歯髄炎にて来院、窩洞形成、
３Mix-MP貼薬、フジⅨ仮封、レジンインレー１回法実施。
３年後に歯根完成を確認。
|
|
症例２：
|
11歳男児、＃35、
中心結節の破折２日目に急性化膿性歯髄炎にて来院、窩洞形成、
３Mix-MP貼薬、フジⅨ仮封、レジンインレー１回法を実施するも 半年後に再度急性化膿性歯髄炎にて来院。
修復物の漏洩による再発と診断し、無麻酔下にさらに深く窩洞形成、
レジンインレー１回法を施術。３年後に歯根完成を確認。
|
|
症例３：
|
11歳男児、＃35、
１週間ほど前に中心結節が破折。
そのまま放置するも痛みが強くなり来院。
急性化膿性歯髄炎（全部性）と診断、髄腔開拡し、時間をかけ 排膿を図ったのち３Mix-MP貼薬フジⅨ仮封。
点滴による抗生剤の投与を併用。
３日目に再度髄腔を開け、３Mix-MP貼薬フジⅨ仮封、
レジンインレー１回法にて修復処置。
現在、術後半年経過するが、根尖透過像は徐々に消失、根尖は完成に 近づきつつある。 |
|
結果と考察：
|
１、歯根未完成歯の歯髄炎の治療は、３Mix-MP法を用いれば１回治療が可能である。
２、再発した場合でも、さらに深く窩洞形成し無菌化することで冠部歯髄を残すことは十分 可能である。
３、歯根未完成歯では、根尖に大きな骨透過像を認めても歯髄は生きていることが多い。 その場合でも適切に排膿を行い髄腔内に３Mix-MPを貼薬、無菌化を図ることで
歯根完成に導くことができる。
|