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1. LSTR療法の基礎    
  星野 悦郎

 病巣無菌化組織修復療法(Lesion Sterilization and Tissue Repair 又は Lesion Sterilization and Tissue Regeneration)は、新潟大学歯学部う蝕学研究グル-プによって明らかにされた、う蝕や歯内疾患の病巣細菌や口腔の各部の細菌の構成や、それらの薬剤感受性の研究の成果に基づいています。
 口腔の病変の多くは細菌性に起こっています。ここで、「細菌性」として、「感染」といっていない点に留意頂きたいのですが、「感染性」と理解すると誤ってしまう点が沢山あります。また、通常の感染では、生体の免疫機構によって、遅かれ早かれ、病巣から自然に細菌は除去されますが、口腔疾患では象牙質など歯質の構造や、歯科材料など病巣の細菌の隠れ場所が多い事が、薬剤を使ってまで原因細菌を除去する事が必要な理由となっています。
 LSTR療法では、この病巣細菌の除去(病巣無菌化)によって、宿主による自然な病巣組織の修復を期待する療法であるため、病巣無菌化後、組織修復が為されるまでには時間がかかります。その間、病巣を再感染から防ぐ必要があり、病巣の密封が重要です。したがって、LSTR療法の基礎としては、「病巣無菌化」、「組織修復」、そして充填窩洞の「密封」が重要です。
組織修復は子田先生に、充填窩洞の密封は柏田先生に、それぞれ言及して頂く事とし、私は、病巣無菌化に関わる事項について参加者のご理解を図りたいと思います。
 LSTR療法は医療の現場では極めて合理的な、常識的なものと思っていますが、従来の歯科治療の常識とは異なっている点も多くあります。研究会参加の皆さんも、そのギャップに悩まれている可能性があります。講演、討論、あるいは懇親会での質疑を通じて、LSTR療法が持つ意義を共有できれば、と考えております。

 

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