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4. 歯周病と病巣無菌化療法
-主として急性症状への対応- 
宅重 豊彦 

 3種混合薬剤を使った3Mix-MP療法は、歯髄炎、根尖性歯周組織炎の治療に応用され、良好な臨床成績をあげている。これらの疾病では口腔常在菌が原因菌であり、3Mixが口腔に生息している全ての細菌に有効であることを考えると、この結果は当然の事と云える。しかし、対象疾患を急性炎症に絞ると、好成績を得るには必ずしも容易ではない。なぜならば、これらの疾患では疼痛を伴っており、疼痛という苦痛から患者を早急に解放するために、疼痛の発生している炎症組織を往々にして除去(例えば抜髄、抜歯)してしまうことが多い。しかしながら、これらの疾病でも速やかに疼痛を消すことができればジックリとLSTR療法が可能と思われる。
 3Mix-MP療法の歯髄炎治療をSave Pulp療法と云う。通常、自発痛を伴う歯髄炎は非可逆性歯髄炎として抜髄の対象となるが、これにSave Pulp療法を施術すると1?2時間で疼痛が消失するので、歯髄の全部あるいは一部の保存が可能となる。
 3Mix-MP療法の急性根尖性歯根膜炎治療をLSTR感染根管治療と云う。急性根尖性歯根膜炎は、自発痛、腫脹あるいは膿瘍が認められる。通常、廃膿を図るため歯肉切開、根管開放、抗菌剤+消炎剤の投与を行う。しかし、本法では貼薬着座に3Mix-MPを置いて密封仮封を行うだけで、半日後には疼痛が軽減ないし消失する。こうした現象は、3Mix-MPの殺菌作用の結果なのか、消炎・鎮痛作用もあるのか興味深いところである。
 1970年代後半になって歯周病に対する抗菌療法の研究が盛んになり、今日、局所化学療は機械的な歯周治療の補助療法として確立したかのようにみえる。その背景には、歯肉縁下プラークの細菌構成の研究が進み、歯周ポケット内プラークコントロールの重要性が認知されたことにある。
  3Mix-MP療法の歯周病治療は、内科的歯科治療の概念に基づいている。その上で歯周ポケットの無菌化を実現すれば、歯周病の進行が止まり、さらにその状態が持続されれば歯周組織が再生する可能性も考えられる。しかし、無菌化すべき歯周ポケットは「体外」であり、口腔との連絡を遮断するのは困難である。
 演者は、歯周病の急性発作に鎮痛、消炎を期待して3Mix-MPを応用し、臨床的検討をおこなった。その結果、歯周病の急性発作を改善するには十分な効果があることが分かった。
今回は、歯周病の急性発作を速やかに消退させる術式を述べ、歯周病の病巣無菌化組織修復療法の方向を探っていきたい。

 

 

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