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   第2回LSTR療法学会 学術大会 (2003年9月14日)
特別講演
「歯髄組織:除去か残すか」?歯内病変は単一ではないが・・?  

  新潟大学教授 星野悦郎

 

 従来、1つの歯に対する歯内治療は1種類で、鎮静療法、断髄、抜髄、あるいは感染根管治療、外科処置などが、病変の診断に従って選択されていた。「歯髄全体に病変が及んだ」と判断する臨床症状は、歯髄の炎症の程度が重度であると考えられるもので、歯の外側からの刺激に知覚反応がない場合(歯髄死、あるいは慢性全部性歯髄炎の診断)、自発痛のある場合(急性全部性歯髄炎の診断)などが基準となる。この文章からも極めて明快に理解できるように、歯髄の病変の状態を判断する材料は、そう適切ではない。「歯髄組織の1部に病変が及んだ」と判断する臨床症状は、さらに明確ではない。
 どちらかというと、歯髄治療の治療体系が、歯髄全体を相手にするか、1部を対象にするか、また、歯髄病変が極めて軽度であると判断された場合の歯髄の鎮静処置を含めて、先ず処置が前提にあり、これに合致する、全部性か一部性か、すなわち、抜髄処置をするか断髄処置をするかと言う選択のための診断となっている。
 感染根管治療では、残髄の場合を含めて、全歯髄腔の歯髄組織の除去・清掃が優先される。
 診断とは、治療方針を決めるものであろうから、従来の治療体系では、問題はない。
 しかしながら、歯髄病変は場所によってその程度が、当然、異なると思われ、実際、う蝕によって穿孔した隅角部に膿瘍状の変化を認め、その周辺に多くの細胞浸潤を認めるものの、その部より根尖側の歯髄の炎症が軽度、あるいはほぼ正常である病理所見も見られる。断髄(というより、歯髄を残す感覚)が可能であれば適応となる状態であろう。う蝕病原物質(う蝕の原因となる細菌性の代謝産物や、細菌そのものなど)の侵入場所に近いほど(すなわち、歯冠側歯冠歯髄)歯髄組織の破壊の程度がひどく、離れるほどその程度が軽いであろうから、積極的に残髄させる処置も考慮される。
 歯髄腔の形態の特殊性から、炎症の波及が根尖部に及び、血管の圧迫して栄養供給が阻害され、病変が歯髄全体に及ぶとして、病状によっては、歯髄全体の病変と捉え、処置がなされる。しかしながら、現在、LSTR療法では、自発痛のある症例でも、歯髄を残す処置での臨床的経過良好例が報告され、不可逆性の歯髄炎の定義が曖昧となってきている。

 

 

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