〈目的〉
約16年前に発症した陳旧性歯根膜穿孔症例に対して、約5年前に再植術を行った症例です。
当時、LSTR 3Mix-MP法を習得していなかった為に、悲惨な経過を辿った症例です。
歯を守るには、如何に手を加えないで治療することが重要であるかを再認識したいと思います。
〈症例〉
患者 :49才 女性
主訴 :右下奥歯の歯ぐきが腫れて気になる。
現病歴:S63,3/13:麻抜。3/17:垂直加圧根充(オピアン法)
4/11:根管内に微少出血あり、止血・消毒後メタルコア・FCKセット
H6, 8/ 1:F6DC┐Br.セット。H9,9/16:7┐歯根縦破折した為Ext
H9,11/ 6:76┐PDセット。
現症 :H11, 4/30:4┐頬側歯肉にGA
X線所見:4┐歯根中央部遠心側に穿孔
処置 :H11,5/28:DC┐除去し、DCB┐再製作
6/3:再植術、DC┐(3┐舌面にフック)をフジリュートセメントで合着する。
H13,12/14:4┐〜3┐間の接合部が緩んだ為、スーパーボンドで修理
〈考察〉
1)治療方針について:
当時は、除去時の歯根破折を危惧しコア除去は不可能と判断したが、普通にコアを除去
出来たのではないか?
敢えて、歯周歯内歯となる可能性がある再植術を行う必要があったか?
(現在は、陳旧性歯根膜穿孔症例に対するLSTR3Mix-MP法を行う)
2)穿孔した原因について:
・抜髄する必要があったか?(現在は、抜髄しないでSave-pulp療法)
・当時、垂直加圧根充するために、必要以上に根管拡大したことが原因と考える。
(現在は、側方加圧根充法を取り入れ、必要最小限の拡大。)
〈結論〉
1)多くの歯科医は、歯に手を付けることが治療だと思ってやってきた。
しかし、結果として悲惨な結末になることがある。
2)抜髄したことが悲劇(患者にとって)の始まりである。
最初に抜髄をしてなければ、本症例の様な結果にはならなかったと思う。
3)再植術を採用したが、メタルコアを除去して根管治療すべきであった。
4)歯に手を加えるほど、歯は壊れる。
従って、歯を守るには、如何に手を加えないで治療することが重要である。
その為には、LSTR 3Mix-MP法は、日常臨床では欠くことの出来ない療法である
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