〈目的〉
比較的希ではあるが、嚢胞が増大して顎骨にまで及ぶことがある、特に下顎では下歯槽神経がある為に嚢胞摘出手術が困難となり、開窓術により嚢胞の縮小を図ってから摘出手術を行うのが通法である。
しかし、開窓術の期間は長く、その間患者は強い口臭に悩まなければならない。
メトロニダゾールは、口腔癌患者の口臭軽減を目的に投与されており、3Mixは、悪臭を発生する口腔細菌に有効であることから、開窓術に油性の基剤に3Mixを混合し好結果を得たので報告する。
〈症例〉
患 者:45歳 男性
主 訴:下顎左側第1大臼歯部の歯肉が腫れた。
原病歴:2〜3日前から腫れた。これまでも幾度か腫れたことがあるが放置
飲酒により口唇の左側がしびれる。
現 症:下顎左側第一大臼歯は残根状態 歯牙動揺(+) 根管より排膿(+)
鈍い自発痛(-),咬合痛(+) 頬側歯肉の腫脹(+)
X線所見:下顎骨体に下歯槽管に及ぶ鶏卵大のX線透過像あり。
処 置:
初診時(H3/1/26)根管を開けて排膿させ、3Mix-MP貼薬(保存療法を目指す)
その後患者来院せず。
77日後 症状の再発で再来院したので,抜歯ー開窓術に治療方針を変更
処置ー6を抜歯し,抜歯窩を広げで開窓術(3Mix-MPドレーンガーゼ挿入)
95日後 これまで来院せず。再度腫脹の発生があり、来院した。ガーゼ交換
97日後 腫脹は消失
以後3〜7日間隔でガーゼを交換
6ヵ月後 痛み発生 3Mix-MPドレーンガーゼ交換
X線写真では著名な改善なし。膿(+) 悪臭(+)
9ヵ月後 X線写真では著名な改善なし。膿(+) 悪臭(+)
3Mix+テラコートリル軟膏ガーゼに交換
術後7日後では膿も悪臭も無かったので,間隔を2〜3週間とした。
1年6ヵ月後 D6F Br.装着
X線透過像の縮小あり.膿(-) 悪臭(-)
〈結果と考察〉
開窓術に伴う口臭は、3Mixで消臭でき、特に油脂性基剤や乳剤性基剤を用いるにと3Mixの効果は持続する傾向がみられた。そのため、患者の日常生活、対人関係、来院回数の点で有効な効果を得られた。
最終的にも嚢胞の摘出手術を行わずに治癒したことも注目すべき点であろう。
また、本法(タンポンやドレーンに3Mixを塗布して患部に置く方法)は、開窓術の他にも応用範囲は広く、3Mix-MP法の外科領域疾患への応用と位置づけられる。
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