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   第6回LSTR療法学会 2007年度学術大会 2007年9月16日
ポスター 1
的確な診断方法の確立を目指して
    −その1:LSTR療法の概念に沿った診断方法を症例をとおして考える−
貝出泰範
     
目 的

 通常の食材では全く問題ないが,硬いもの,例えばゴボウとか干物,トマトの種,胡麻などを食べたら痛い。顕著な歯頸部歯肉の腫脹があって,咬合調整や抗生剤等の投与を受けるも症状が改善されない。または,冷温水痛,打診痛はほとんど無いものの強度の自発痛があって鎮痛剤が手放せないといった,教科書的な診断では対応できないような症例に日常診療で遭遇することがある。しかし,症状が教科書的でないことから,その診断および治療方針決定には困難を極めるものの,患者救済の使命感から,教科書に近似的な診断および治療方針決定を行い,その後の処置が迷路に入り込むこともしばしば経験される。
 そこで,今回はこうした教科書的でない数症例を参考に,3Mix-MPの適否を含めた的確な診断方法の確立の問題について検討することとした。

 

症 例

 今回提示する症例の来院時状況の概略を以下に示す。

1. 硬いものを食べると痛くて他院を受診したが,根尖病巣も根分岐部病変も無いということで咬合調整だけを受けた。しかし,症状は改善されなかった(失活歯)。
2. 顕著な歯頸部歯肉の腫脹および歯牙の動揺があって他院を受診した。咬合調整と抗生剤の投与(4日分)を受けるも,歯肉の腫脹を含め症状の改善がほとんど無かった(失活歯)。
3. 2〜3ヶ月前から少し自発痛があったが,ここ1ヶ月前から顕著になった。他院ではX-P的に問題無しということで,処置保留による経過観察を勧められた(失活歯)。
4. 10日ほど前から自発痛(++)でずっと鎮痛剤を服用し続けている。他院では,冷水痛(±)打診痛(−)であったが,齲窩が大きいため抜髄を勧められた(生活歯)。
5. 3週間程前から自発痛があり,自発痛(++)の時は鎮痛剤無しでは生活できない。冷水痛(−)打診痛(±)だが,他院では大きな修復物の存在から抜髄を勧められた(生活歯) 。
6. 硬いものを食べると痛くて(下顎第2大臼歯)他院を受診したところ,埋伏智歯の影響によるものと診断された。抗生剤と鎮痛剤の投与を1週間受けるものの症状の軽減は無く,その1ヶ月経過後も症状はまったく同様であった(生活歯)。

 

結果と考察

 上記症例には3Mix-MP法での治療を希望して来院した患者もいる。しかし,3Mix-MPは万能薬ではないので,それぞれに3Mix-MPの適否も含めた診断および治療方針決定を行う必要がある。結果的には上記症例は概ね良好に経過しているが,前医,前々医の診断,治療結果を参考にして診断および治療方針決定を行ったことが好結果に繋がったと考えられる。 では,こうした症例に対して最初から的確に診断し,LSTR療法が掲げる「体をできるだけ傷つけず治癒に導く」術(含:不必要な服薬の回避)は無いものであろうか。歯科医が自分の診断能力アップに努力することは当然必要であるが,個人では自ずと限界が存在するであろう。このように考えると,こうした教科書的でない症例に対しては,皆が主観に左右されない規格化および細分化された診断体系を共有し,多くの症例を精査,検討することによってその診断の的確性の向上を図り,対処する必要があるように思われる。今後は,この点を具現化する報告を試みたい。

 

 

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