クラウンブリッジの予後を考慮したメタルコア製作の一工夫　

　日常の臨床において，陶材焼き付け前装冠や，多数歯連結のブリッジが装着されてい 　る支台歯に根尖病変が発生し，再治療が必要な症例を数多く見かける．再治療は，歯冠修 　復物を外し，築造体を除去し，根管治療を行った後に，再び築造体を含む歯冠修復の治療 　を行なうことになる．こうした再治療は，当該歯にロングポストの築造体が装着されてい 　る場合，除去時に根管内穿孔や歯根破折の危険を伴い，精神的・肉体的苦労は大きい．そ 　の為に，成功率は低いが歯根端切除術を選択せざるを得なかったり，やむなく抜歯するこ 　ともある．患者にとっても心身共に大きな負担となっている． 　　根尖性歯周炎の治療において，従来の治療法が根管拡大，根管形成，根管充填を優先して 　いるのに対し，我々は，感染根管の無菌化を優先する治療法を2007年3月のIADRで発表 　している．この病巣無菌化療法は，病巣内の全ての細菌を殺菌できる抗菌剤と薬剤を象牙細 　管の隅々まで浸透させる基剤を使用することにより，根管の機械的拡大を必ずしも行わなく 　とも根尖病変の治癒を図ることができる．

今回，歯冠修復物に問題が無く，根尖病変が発生して再治療を必要とする症例に対し，装着されている歯冠修復物を除去することなく，薬剤を貼薬するための小さな穴を空けるだけで根尖病変を治癒に導く方法を考案した．発表では病巣無菌化療法により治癒が図られた症例を紹介し，さらに、メタルコアに溝を付与することにより、再治療の際に、貼薬のための穴を安全に簡単に空けられるように工夫したメタルコアの形態を考案したので報告する．