良い歯科治療というのは、患者の要望に応え、機能・審美回復させることであろう。 勿論、術後の経過も良好でなければならない。
かって、むし歯が蔓延し、痛みを訴える患者が殺到した時期があった。 その当時、歯科治療に痛みは付きもの、でもあった。耐えられない痛みから救ってあげる際に、
他方の痛みは我慢、我慢、であった。 この歯を削る際の痛みに対処するため、エアータービンや局所麻酔が導入、進展した。
今は知る人も少ないであろうが、エアータービンによって、如何に歯科医も患者も救われたことか。
麻酔薬や注射器、あるいはその他の麻酔法の改良等により、歯科治療時の無痛化が可能となっている。
歯科治療の不評の1つが、治療時の痛みであるから、この治療手技の進展は確かに患者を治療時の痛みから「救った」であろうが、この進展は、しかし歯科医が「好きなように歯を削るための技術の進展」ではなかったか?
その後の充填窩洞形成の術式は、理想型を求めて「削る」事に躊躇していない。
歯科医療機器具や材料、術式は、種々の需要によって開発され進展する。 一般外科を見聞きすれば、侵襲をできるだけ少なくする、切除部位をできるだけ少なくする術式やそれを可能とする機器具類の開発が進んでいる。内視鏡手術はその最たるものであろう。侵襲をできるだけ少なくする、切除部位をできるだけ少なくする、と言う意識があれば、そのための術式が進展している。
この際、「患者に優しい医療」という観点があったに違いない。
歯科医療においても、「歯科医の治療の便宜のため」ではなく、「患者に優しい」という観点があれば、これに沿った歯科医療の進展が可能なのであろう。
しかしながら、現在、「良い治療をしてあげている」と考えている歯科医が、その治療が「患者に優しい」であろうかとか、「患者が違うことを望んでいる」かのしれない、というようなことを感じることがあるのであろうか。
歯科医療の一段の進展を図るためにも、歯科医療に不満や不安を持つため受診しない隠れ 歯科治療需要を掘り起こすためにも、歯科医の基本的な常識である「歯科医中心の観点」から「患者に優しい」という観点に、歯科医自身が意識変革する必要があろう。
共に考えていきたい。
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